iGallery DC

坂本泉展
シリーズ Old but GOLD Vol.5
SAKAMOTO Izumi

坂本泉展の展示風景です。



各壁面の展示です。



画廊入り口から見て、左側の壁面です。



正面の壁面です。



右側の壁面です。



キッチンの壁面です。

以上の13点で坂本泉展は構成されています。
作品はすべて紙に毛糸を使用しています。
作品の詳細を御覧下さい。



左壁面、左端、左から2番目、3番目の作品です。
左はタイトルーマチス「ダンス」(部分)でサイズ23×18.5cm、
上はーゴッホ「糸杉」I(部分)で15×11.5cm、
下はーゴッホ「糸杉」II(部分)で15×11.5cmです。



左壁面、左から4番目、5番目の作品です。
左はーゴッホ「糸杉」で33.5×31cm、
右はースーティン「シャルトル大聖堂」で38×27cmです。



左壁面、左から6番目、右端の作品です。
左はーミレー「種をまく人」で47×49cm、
右はーミレー「羊飼いの少女」で74×97cmです。



正面壁面の作品です。
ーミレー「晩鐘」で95×115cmです。



右壁面、左端の作品です。
ーミレー「春」で87×116.5cmです。



右壁面、左から2番目、3番目、右端の作品です。
左はーセガンティーニ「編み物をする娘」(部分)で37×58.5cm、
中央はーセガンティーニ「アルプスの真昼」(部分)(部分)で58.5×38.5cm、
右はー「アルプス」(部分)で41×59cmです。



キッチン壁面の作品です。
ーミレー「グレヴィルの断崖」で47×48.5cmです。

<作家コメント>
《Conscious-Unconscious》からのシリーズとなるインスタレーション。
19世紀の西洋絵画をモチーフとして、紙に刺繍を施して再現し、その裏側を展示して見せる。
そこには美大卒業後に2年間勤めた山梨県立美術館で出会った19世紀のフランスの画家ジャン・フランソワ・ミレーをはじめとするFine Artの世界へのオマージュ、そして200年前の「現代」、時間が経って見る200年前という「今」とは何なのかという問いかけがある。
綺麗に見える表の裏側に見える真実の姿。完成とプロセス。
裏を表にひっくり返すことで意識の裏にある無意識を見たいという欲求。
希望を見出すには我々はどうしたらよいのか?

「泉を探して」(歩帆舎 堀切春水)
食品の包装パッケージや紙、毛糸やシーツなど生活に密着したもの、手で作ったものを素材としたインスタレーションを制作し続けるアーティスト坂本泉。アーティストとしての活動を始めて今年で20周年、Artist in Residence Yamanashiの運営を始めて15周年を迎える。
スタイリストやファッションデザイナーという職業に憧れて女子美術大学芸術学部プロダクトデザイン学科に入学。その後、美術の教員として地元山梨で働き、1991年から1994年までの3年間、アメリカで主婦としての日々を送った。
「自分は表現をする人にはなれない。」と思い込んでいた坂本の心を激しく揺るがす重大な出来事との出会いが、アーティスト人生の始まりだった。
1つは2001年に起きたアメリカ同時多発テロ事件(2001年9月11日)。
坂本はすでに帰国していたものの、愛するアメリカが崩れる様子をテレビで見て、ひどく心が荒み、傷つき、塞ぎ込んだという。
もう1つは同年に開催された第1回横浜トリエンナーレとの出会いだった。
多発テロで荒んだ気持ちが癒されただけでなく、それまでに美術のテーマになり得ないと思っていた表現を目の当たりにして強い感銘を受けたという。
「上手い下手ではなく表現したいことが私にもある。」
そんな確信が芽生えた。
日本に戻ってからの生活で今まで通り生きていいのだろうかというぼんやりとつかえていた気持ち、多発テロで傷ついた心、横浜トリエンナーレで癒された心、その全てがアーティスト坂本泉として生きることへと導いた。
日本でのアーティスト・イン・レジデンス事業の草分け的存在であるアーカス・プロジェクト(1994年~、茨城県守谷市)の存在を知った2005年にアーティスト・イン・レジデンスの運営に漠然とした興味を持ち始め、同年、自身が生まれ育った元産婦人科医院を自身の個展「HOSPITAL→HOSPITALITY」を幕開けとしてAIR(アーティスト・イン・レジデンス)として蘇らせ、Artist in Residence Yamanashi(通称エアリー)の運営をはじめた。2007年にはアーティストとして初めてロッテルダムのレジデンス「Kaus Australis(カウス・アウストラリス)」にて滞在制作を体験した。
多くの命が産み落とされてきた元産婦人科医院は、今や甲府という一地方を越えて、日本という国を越えて、たくさんの作品と人と交流を産み出す甲府の貴重な文化的拠点となった。
こうしたAIRのディレクターという顔の裏に、礎に、20年来のアーティスト人生がある。
「作品は全て現在進行形であり、結論もなければ完結することもない。」
なぜなら全て実験の途であり、自分自身への問いかけであるから。
Wanna be Artist, Searching for Oasis.
泉(=自分自身 / 新たな価値観 / 希望)を探して、制作を続ける。それが生きるということ。


「作品について」(iGallery DC 福田昌湜)
坂本さんの作品のモチーフになっているは西洋近代名画です。
ミレーやゴッホなどの教科書に載っているような絵画です。
これらの絵は今でこそ見慣れた技法とテーマの作品ですが、発表当時は衝撃的なものでした。
農民の日常を描くという驚き(宗教画や歴史画、上流階級の風俗が主なモチーフの時代)、絵具が荒々しく塗り込められた前衛的なゴッホの画法。

その衝撃は200年の年月によって薄められましたが、それを<今>に蘇らせるのが、坂本さんの試みです。
ただし手法はキャンバスと筆、油絵具ではなく、紙と毛糸の刺繍です。
刺繍による名画の模写(コピー)はさほど珍しくはありません。
おかんアートなどでもお馴染みですが、坂本作品がまったくのオリジナルであるのは、意識(Conscious)と無意識(Unconscious)がテーマになっていることです。
作品の展示は刺繍を施した表面を見せるのではなく、縫っている最中は見えない裏面がメインになっています。

つまりは表面が意識で裏面が無意識なのですが、実際に見てみると、そのマチエールや画面の表情の違いに驚きます。
まるで別の絵のようですが、ミレーの「晩鐘」はやはりミレーの「晩鐘」に相違ありません。
無意識、特に夢を主題にした美術といえばシュールレアリズムです。
しかし坂本作品はそれらとも異なる。
刺繍の表面は端正な点描ですが、裏は毛糸の物質感がゴッホの筆致を想像させる荒々しさです。
表とはまったく違った美しさで、そこにあるのは制御されていない<生>の美しさです。

人が社会を営む時、<生>は制御されています。
なぜならそれが野放しになると秩序が保たれないからです。
しかし制御が行き過ぎたり、長期に渡れば社会は閉塞感が支配し、<希望>が失われます。
だから、坂本さんは裏面を展示して、<生>の生々しい躍動とカラフルな輝きを提示するのです。
それはミレーやゴッホの描いた<生>に見事に重なります。
名画の革新性を蘇らせ、<希望>の源泉を模索し、社会に活力を与える。
それが坂本さんの刺繍作品であり、美術のジョブであり、年長者(Old)の役割ではないかと思います。

ご高覧よろしくお願い致します。

プライスリスト1
プライスリスト2

<シリーズ Old but GOLD
さほど遠くない過去、共同体には長老という存在があり、尊敬の対象でした。
その経験の積み重ねから生まれる知恵が尊ばれたからです。
昨今は若くあることに価値が置かれ、アンチエイジングが消費のターゲットになっています。
しかし、年齢を重ね、それ故にますます輝くことこそが本来の老いの在り方です。
この度、60歳以上に限定した山梨の現代美術作家シリーズ「Old but GOLD」を開催したします。
現代に於いて60歳は老人の範疇外かもしれませんが、その長き経験を活かした美へのアプローチは貴重です。
美術には若者の新鮮な感性が必須ですが、年長者の奥深い洞察も不可欠です。
シリーズとしてご高覧いただければ幸いです。

歳を重ねてますます輝くー60歳以上限定、山梨の現代美術作家シリーズ
vol.1 高橋辰雄(1/10〜1/27) vol.2 橘田尚之(7/4〜7/21)
vol.3 飯野信二(8/1〜8/18) vol.4 浅川徹(10/3〜10/20)
vol.5 坂本泉(10/31〜11/17) vol.6 田邉かほる(12/5〜12/22)

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fuku-mac@@kc4.so-net.ne.jp
(*お手数ですが@を一つ取ってから送信してください。)

坂本泉展
会期:2019年10月31日(木)〜11月17日(日)
開廊日:木・金・土・日
時間:12:00〜18:00


会場アクセスと展覧会スケジュール