藍 画 廊



前川育美展
MAEKAWA Ikumi

前川育美展の展示風景です。



設置場所ごとの展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、正面壁面方向の展示です。
正面壁面の作品は、タイトル「遠く、光にかこまれて」で、サイズ14(H)×32(W)×10(D)cmです。
手前、画廊床面に置かれた作品は、「息づくもの」で20×138×16です。



右壁面方向の展示です。
奥は上で紹介した「息づくもの」で、手前の床置きの作品は「畔」で10×180×6です。



小展示室の展示です。
「雨を待つ」で8×52×4です。

以上の4点で前川育美展は構成されています。
使用している素材はすべてライムストーンです。



正面壁面の「遠く、光にかこまれて」です。
角度を変えて撮影したものをご覧下さい。



前川さんは前回の藍画廊個展と同じように素材にライムストーンを使用しています。
この石の特色は柔らかな質感と暖かな色彩にあります。
通常は建造物の内外装材として使われることが多いそうです。
前川さんの作家としての資質とこのライムストーンは相性が良いようで、今回もこの石の美質が存分に生かされています。

<作家コメント>
アトリエのすぐ裏は なだらかな斜面になっていて、
草花が所狭しと生えています。
その斜面を歩くと 地面が柔らかく沈んで
同時に 胸の奥のこわばった所もくぼませるのです。
そんな静かな感覚は 世界の内側を見せてくれる気がします。


今回の展示、上の作家コメントにあるような、実際の風景が制作の基になっています。
といっても風景をそのまま写したものではなく、一度前川さん内(なか)で咀嚼され、改めて表出されたものが作品となっています。
「遠く、光にかこまれて」は、アトリエの後方にある森をモチーフにしたものですが、タイトル通り、光に焦点があてられています。



床面の作品、「息づくもの」です。
美しいカーブと精細な彫りが、何ともいえない雰囲気を醸し出しています。
ライムストーンの色調もうまく生かされた作品です。



部分のクローズアップです。
彫りの精細さがお分かりになるでしょうか。



同じく床置きの「畔」です。
これも実際の畦がモチーフになっていますが、制作過程で相当に形状を換えています。
画像では分かり難と思いますが、この作品は5つのピースで1つの作品を形成しています。



部分のクローズアップです。
この作品は前回個展の方形のカタチを継承していて、裏側から彫って、穴を開けているのも同じです。



小展示室の「雨を待つ」です。
これはアトリエ裏の丘陵がモチーフになっています。
この二つの丘陵の間に「遠く、光にかこまれて」の森があるそうです。



角度を変えて撮影した「雨を待つ」です。



今週の藍画廊、美しい空間です。
画廊の白い壁面と薄いグレーの床面、それとライムストーンの作品が調和して、柔らかな空気が流れています。
一見すると作品が少ないように見えますが、実際に画廊で見ると、過不足ない作品の佇まいを感じます。

石彫といえば、どちらかといえば重厚でダイナミックなタイプの彫刻が多いように思えます。
ところが前川さんの石彫は、(芯は在るものの)、柔らかく、優しい。
そして、シンプルで丁寧。
石という素材の硬質さを忘れてしまうような、趣(おもむき)があります。
これは希有な、素質、才覚ではないでしょうか。

アトリエのすぐ裏は なだらかな斜面になっていて、
草花が所狭しと生えています。
その斜面を歩くと 地面が柔らかく沈んで
同時に 胸の奥のこわばった所もくぼませるのです。
そんな静かな感覚は 世界の内側を見せてくれる気がします。


前川さんのアトリエは四国の高松にあります。
そのアトリエの裏は自然豊かな場所のようです。
豊穣な草花と土。
踏みしめると、足裏から心に気持ちの良い感触が伝わります。
それは多分、普段は感じることのできない、自然と共に生きている喜びのようなものと想像します。

制作過程はストイックに彫る作業が続けられているのかもしれません。
しかし出来上がった作品は、ストイックな姿勢とは正反対の表情が見えます。
そこにある生の喜びは、穏やかで、豊かで、ストレートで飾り気のないものです。
誤解を恐れずにいえば、華やかささえ感じます。

前川さんと作品についてお話ししていて、作品の部分の説明を言葉で伺うのは、あまり意味のないことだと思いました。
なぜこのような形状になっているかを、言葉で説明するのはとても困難な作品だからです。
具象そのものともいえず、抽象でもなく、このシンプルで個性的な作品群。

対峙することです。
対峙して、心静かに全体で、空間で作品を眺める。
そうしてしばらくすると、作品の、そこに込められた大切なものが開示してきます。
あたかも、柔らかく沈んだ地面の感触が、胸の奥のこわばった所もくぼませてくれるように。

ご高覧よろしくお願い致します。

2010年藍画廊個展

 

会期

2012年3月26日(月)ー3月31日(土)

11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)



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