藍 画 廊



オオワダノリコ展
大和田タダコ+オオワダノリコ
OowadaNoriko


オオワダノリコ展の展示風景です。



各壁面の展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
タイトル「My mom's days」で、サイズは可変で、製本 52 冊と、製本されていない A4 のコピー紙で構成されています。



正面の壁面です。
「My mom's days」の続きです。



右側の壁面です。
テーブルの上は「My mom's days」の続きです。
その右の平面は「2011 年 私が美術を通し語ること」(板・油彩・鉛筆・インスタントレタリング・0.5 ミリ黒テーフ)で130(W)×130(H)(S60)、右端は「White Balance」(鏡・ミクストメディア)で45(W)×36(H)×12(D)です。



入口横の壁面です。
この作品はオオワダノリコさんのお母様の大和田タダコさんの作品です。
「木洩れ日」(キャンバス・油彩)で130×162(F100)です。

以上の4点が展示室の展示で、その他小展示室に映像作品1点、立体作品1点の展示があります。

本展は特異な展覧会です。
オオワダノリコさんの個展ですが、故人となられたオオワダさんのお母様との二人展でもあります。
その辺りの事情は画廊に貼付されたオオワダさんのコメントに記されていますので、全文を転載いたします。

この度の個展について

私は都内在住の美術家です。
これは個展ではありますが、個展ではないのかもしれません。
その話を少しさせてください。
私の故郷は福島県いわき市です。
私はその地で生まれ、そしてその地で育ちました。
私の母、大和田タダコは大阪出身の洋画家で、いわき市在住でした。
関西女子美時代は桜井悦氏、小磯良平氏に師事し、 その後上京、猪熊弦一郎氏に師事、新制作協会展に出品したり 現在は女流画家協会会員でした。
今年、2011年03月11日、大きな地震が東北地方を襲いました。
そしてその次の日である3月12日 母は震災の2次災害で愛犬と共に亡くなりました。
私は美術を通しものごとを表現する立場として、 この現実をどのように作品にできるのか、暫くは分かりませんでした。
母は一体、この世に何日生きたのだろうか。
生まれた日から最後のその日まで数えてみると、それは31157日でした。
3万1千157日。 数字として見てみると、想像を絶する膨大な数字ではないようにも思います。
しかし、それは何にも替えることのできない母の人生でもあります。
その1年を1冊にまとめた時、母のそれは85冊となります。
その一日、一日を私は今、確認する作業をしています。
その行為とそれに伴う結果が作品となります。
作業はしばらく続くので、画廊でもタイプを打ち続けます。
しかし、そう遠くない日、この作業も終わる日が必ず来るのです。
これが今年の私の表現なのです。

2011年11月



31157日を1年ごとに1冊にまとめた本が壁面に整然と展示してあります。



表紙です。
これは1945年の巻(冊)で、6981から7345の日数がタイプされ1冊にまとめられています。



製本前のページで、これは53歳(1978年)の巻の表題にあたります。



1980年の1月1日で、日数は19764になっています。
本の中身はこのような年号と日付とナンバー(日数)が、1ページ毎に記されていて、その1年分が1冊になっています。
お母様の冊数(享年)は85ですから、「My mom's days」はまだ制作の途上にあり、その様子も画廊で見ることが出来ます。



右壁面の「2011 年 私が美術を通し語ること」です。
中央の楕円はオオワダさんが長年テーマとしているカタチで、縦160mm、横110mmの長方形からくり抜いた形状です。
この作品は家族をテーマとしていて、4つの楕円が、ご両親と姉妹二人のオオワダさんの家族を表しています。
そして、お母様の死亡年月日が数字で表されています。



そのテーマとしている、縦160mm、横110mmの長方形からくり抜いた形状で制作された「White Balance」です。



入口横壁面の大和田タダコさん、つまりオオワダノリコさんのお母様の作品「木漏れ日」です。



311の東日本大震災、想像を絶する被害を東北にもたらしました。
不幸にも、オオワダノリコさんのお母様はその犠牲者の一人になられてしまいました。
お母様の突然の死。
それは唐突すぎて、オオワダさんは実感としてその事実を捉えることが出来なかったそうです。

母の死を確認する。
それは遺族として辛い作業ですが、美術家として何を為すべきかという、自分自身への問いと重なります。
お母様の生きた日数を数え、それを1日1枚としてナンバーリング(カウント)し、1年分を1冊の本とする。
それがオオワダさんの出した答えの一つです。
85冊の本に記されるであろう、31157の数字。
その1枚1枚(1日1日)が、かけがえの無いお母様の生きた証であり、数字です。

通常、人の一生は年単位で表されます。
しかし、それを日単位で表した時、不思議な感覚を覚えます。
31157という数字が、(オオワダさんも記したように)、多いのか少ないのかすぐには判断できません。
手作業で、生きる(生きた)ということを確認する。
それは一つの解かもしれません。
そこには年単位では決して知ることのできない、1日の重みが表出するからです。

この母子による特異な展覧会には通底するテーマがあるように思えます。
それは家族です。
(一見関係なさそうな、小展示室の映像作品にも家族というテーマが含まれています。)
人の最小の社会的集団としての、家族。
震災は、その家族の重要性を不幸な形で露にしました。
美術家は美術家であると同時に、家族の一員です。
オオワダさんの作品を拝見していると、そこに、生と死を扱う美術家の立場というものがあるような気がします。

ご高覧よろしくお願い致します。


会期

2011年11月7日(月)ー11月12日(土)

11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)



会場案内