藍 画 廊



山田正一郎展
YAMADA Shoichiro


山田正一郎展の展示風景です。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から、タイトル「Alternative Space」(M 画用紙・アクリル絵具・ガッシュ)でサイズ100(H)×72.5(W)cm、「Effects」(コットマン紙・M 画用紙・アクリル板・アクリル絵具)で180×125です。



正面の壁面です。
「Mistakes」(コットマン紙・アクリル板・アクリル絵具)で170×200です。



右側の壁面です。
「Imperfect Circle」(コットマン紙・アクリル絵具・ジェルメディウム)で180×300です。



入口横の壁面です
左から「Otherside」(アクリル板・アクリル絵具)で27×34、「良き統治」(綿布・膠・方解末・炭酸カルシウム・木工用ボンド・
アクリル絵具・ペンキ・岩絵具)で145×113です。

以上の6点が展示室の展示で、その他小展示室に2点の展示があります。



左壁面の「Alternative Space」です。
抽象画ですが、他の作品に比べるとオーソドックスな絵画で、画材も特殊なものは使用していません。
山田さんの絵画の原点に近い作品かもしれません。



同じく左壁面の「Effects」です。
この画像では分かりませんが、表面全体に透明なアクリル板を使用しています。
それも部分的に二重、三重にアクリル板が重ねてあり、そこにも描画、刻印が為されています。

構造を簡単に説明すると、パネルに紙が貼ってあり、まずそこに絵が描かれます。
その上に大きなアクリル板で全体を覆い、そこにも同じように絵が描かれます。
そして、部分的に小さなアクリル板が貼られていて、描画が為されています。


「Effects」の部分です。
この画像でも分かり難いと思いますが、街の風景がスナップでランダムに描かれています。
アクリル板にカッターで線を引き(刻み)、その線に絵の具を塗り込む形で、風景が描かれています。
その上から(大胆で動きを感じさせる)筆致で描画されています。



正面壁面の「Mistakes」です。
これも透明なアクリル板を用いた作品です。
パネルに紙を貼り、その表面全体をアクリル板で覆っています。
描画はアクリル板の両面(表と裏)にアクリル絵具で描かれていて、不思議な立体感のある絵画です。



右壁面の「Imperfect Circle」です。
Imperfectは不完全な不十分なという意味です。
横幅が3mもある大作ですが、細かい部分にまで手が入っていて、しかも紙へのカッターによる切り込みが随所に見られます。
アクリル板は使っていませんが、山田さんの絵画らしいスケールのある、手の込んだ作品。



入口横壁面の「Otherside」です。
アクリル板でボックスを作り、その内側からアクリル絵具で描かれた作品。
人物の描写が見られますが、特定の人物ではなく、ネット上でランダムにすくい上げた像だそうです。
「Alternative Space」が山田さんのオーソドックスな絵画の原点としたら、「Otherside」はアクリル板を用いた絵画の原点といえるかもしれません。


「制作において、自らの追及するべき事をただ追及すること。
なおかつ、僥倖として、鑑賞者に刺激と喜びを与えること。
そのような離れ業を、表現者は、行っていかなければならない。」


上は山田さんの作品に対するコメントです。
案内状で見た山田さんの作品「Mistakes」、近未来都市を思わせる描写ですが、実際に見てみると、大きな刺激を受けました。
左壁面の「Effects」も、そうです。
何より透明なアクリル板の使い方に感心、歓心しました。

山田さんの絵画は概ね抽象ですが、部分に具象もあり、そういった区分けはあまり意味がありません。
それよりも作品に底に流れている主題の方に興味があります。
特に具体的なものは描かれていないのに、近未来都市やコンビナートを思わせる「Mistakes」。
イメージが多層で、作品の構造も複数のレイヤー(層)で成り立っている「Effects」。
これらは現代社会、あるいは人間が向かおうとしている社会を暗示させます。
実際に山田さんに伺ってみると、やはり、制作の基本テーマには社会との関わりがあるそうです。

しかししかし、(再びの想ですが)アクリル板の用い方と複雑な描画の方法には、感心、歓心しました。
用い方を間違えるとチープな表情を見せてしまうアクリル板を、うまく手なずけて、自分のものにしています。
そしてその透明な性質を活かして、両面に描いたり、カッターで線を刻んだり。
そういった特殊で複雑な手法にまったく無理がありません。
そしてその効果は、とても独特で、山田さんのものになっています。

「奇をてらう」という表現がありますが、これらの作品は、そのようでいて、そうではありません。
とても自然で、しかも他に例がない。
形式と内容も一致しています。
必然があって、そのような画材を用い、描き方をしています。
絵画という歴史と伝統のある様式では、意外に難しいことではないでしょうか。

特殊な画材は用いていないものの、「Imperfect Circle」のスケールの大きさと手法にも目が行きます。
ただ大きいからスケールがあるのではなく、遠近のあるスケールが画面からうかがえます。
細かな積み重ねと、大胆が描写が、遠近のあるスケールを生んでいるのです。

手法、技法の斬新さと、内容の真っ当さ。
面白い絵であり、主題に興味が行く絵です。

ご高覧よろしくお願い致します。


会期

2011年5月23日(月)ー5月28日(土)

11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内