日比野絵美展
ーWhite Roomー
HIBINO Emi
日比野絵美展の展示風景です。
各壁面の展示をご覧下さい。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
5枚組の作品で、タイトル「work I」で、91(H)×52.5(W)cm×5枚。
紙・インク(モノタイプ)を使用しています。
正面壁面の作品です。
4枚組の作品で、タイトル「workII」で、91(H)×52.5(W)cm×5枚。
紙・インク(モノタイプ)を使用しています。
右壁面の作品です。
5枚組の作品で、タイトル「work III」で、91(H)×52.5(W)cm×5枚。
紙・インク(モノタイプ)を使用しています。
以上の3点が展示室の展示で、その他小展示室に2点の展示があります。
左壁面の組作品のうちの1点です。
活版印刷の写真の網点のように見えますが、部分を拡大してみましょう。
これは銅版のドライポイント(腐食を用いない技法)で、銅版に直接ドット(点)を彫っていったものですね。
銅版は木版と反対で凹版ですから、版を彫ると、そこにインクが付きプレス機で刷ることができます。
上の画像を見ると、部分的に空白を作りながら、ある程度規則正しくドットが彫られている(刷られている)のが分かります。
正面壁面の組作品の1点です。
左壁面の作品と微妙に違いますね。
どこが違うのか、お分かりになりますか。
これは右壁面の1点です。
これも微妙に違いますね。
実は、展示室に展示された3点(14枚)の作品は、たった1枚の銅版で作られています。
ほぼ正方形の1枚の銅版を上下に刷って1枚の作品にするのが基本ですが、銅版は上下左右に回転させています。
しかも版を置く位置も上下左右に微妙に異なっていますので、版画とはいえ、同じ作品は1枚もありません。
全部が微妙に異なる作品です。
なぜこのような作品を日比野さんは作ったのでしょうか。
ご自身のコメントがありますので掲載します。
私は、作品と場のつながりや、関係性に着目して制作を行っています。
「場」とは展示空間自体の事でもあるし、自分と関わる場所を指します。
場を意識しながら制作をする事でその場所の持つ空気、時間、音、光、歴史、全てが合わさり、私の作品は初めて作品として成立します。
空間を感じ、自分なりに理解し、解釈する事によってその場に寄り添う作品が生まれ、空間全体を作品とする事により鑑賞者にその場を体感してもらいたいと考えています。
今回の展覧会のタイトルにもなっているWhite Roomは藍画廊の空間を頭の片隅に置きながら制作を進めている一連のシリーズ作品です。
自分が感じたもの、見たものを素直に表現できたらと思っています。
このコメントを読むと、作品の主体として、空間、場に重きを置いているのが分かります。
ただし、作者の意図はインスタレーションではないと思います。
小展示室の2点です。
左は「white room (dot)」で24.5 × 29.5、紙・ダーマトグラフを使用しています。
右は「white room」で、24.5 × 29.5、紙・ダーマトグラフ・インクを使用しています。
展示室の無機質なドット作品に比べると、可愛らしい花びらのパターンのような作品です。
日比野さんの版画作品、相当に異色です。
これを版画と呼ぶには若干抵抗がありますし、前述したようにインスタレーションとも違います。
コメントどおり、空間、場に重きを置いた「作品」です。
最初は写真を網点にして拡大したものかと思って、目を細めて眺めてみました。
しかしそこには一向に風景や静物らしきものが浮かんできません。
あるのは規則正しく並べられた、同じようなドットの集合体。
頭を捻ります。
しかし空間、場を主体に見てみると、見え方が一変します。
藍画廊のWhite Roomと不可分(一体となった)作品の姿が見えてきます。
そしてその計算がかなり緻密であることも分かります。
しかしだからといって、息苦しいような計算された空間ではありません。
整然としていますが、開放感があります。
場が開かれている感じがします。
再度記しますが、日比野さんの版画作品、相当に異色です。
そして、相当に面白いです。
なぜ面白いかと言えば、一見コンセプチュアル(概念的)な作品に見えるのに、まったく違うからです。
何気に、しなやかなで自由な作品なのです。
藍画廊の白い空間にドット(点)を打ちながら、藍画廊という空間と自身の表現を融和させています。
White Roomという、いわば映画のスクリーンのような架空のものを、実在化させています。
先週の菊池さんも版画の作品でしたが、今週の日比野さんも版画の人。
版画の未来は明るい、と(版画を少し習ったことのある)わたしは思いました。
会期
2011年1月31日(月)-2月5日(土)
11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)
会場案内