藍 画 廊



川へのドア展 2010
DOOR TO THE RIVER 23


川へのドア展 2010の展示風景です。



画廊入口から見て、左の壁面です。
左から、仲野泰生さんの作品、タイトル「ノートの時間」、サイズはA4、ノート、阿部英也さんの2点「Room for the Squares」「サンテグジュペリの城壁へ」は共に全紙サイズ、松川正浩さんの2点「DOOR TO THE RIVER 23」は450(H)×450(W)mm、「そこはかとなく」は280×280です。



正面の壁面です。
河上喜彦さんの「CARD WORKS・240DAYS」で100×150です。



右側の壁面です。
左から菱刈俊作さんの「後日の光景」10点ですべて八つ切、地場賢太郎さんの『ライフスクロール「仮名の誕生』で380×500、河上明彦さんの4点「ことのゆくえ -残匂-」ですべて300×300です。



入口横の壁面です。
和田彰さんの「てるてる」11点ですべて200×200です。

以上が展示室の展示で、その他小展示室に和田彰さんの小品が展示されています。



仲野泰生(NAKANO Yasuo)さんの作品、タイトル「ノートの時間」の部分です。
作品は紙とコラージュで制作されています。
仲野さんは美術館で学芸員をなされています。
美術館には毎日多くの案内状やポスターなどが送られてきます。
館宛のものも、仲野さん個人宛のものもあります。
そんな日常のインフォメーション(情報)や、それに喚起される思索、想像などをコラージュにした作品です。
コラージュは紙とそれを束ねたノート(ブック)に表現されています。



阿部英也(ABE Hideya)さんの「サンテグジュペリの城壁へ」の部分です。
2点の作品、「Room for the Squares」と「サンテグジュペリの城壁へ」は共にコラージュ作品で、前者は屋外、後者は室内の写真を基に制作されています。
上の画像では分かり難いと思いますが、建物の細部を丁寧に切り抜いてコラージュされています。
万華鏡のような作品で、方形でカットされたモダーンな素材のコラージュ「Room for the Squares」と不定形でクラシカルな「サンテグジュペリの城壁へ」の対比も見ものです。



松川正浩(MATSUKAWA Masahiro)さんの「そこはかとなく」です。
窓のような、絵が二層になった絵画です。
板にアクリルで描かれています。
正方形の二重の画面で、色と形が響き合っています。
松川さんのもう一点は本展のタイトル「DOOR TO THE RIVER 23」で、タイトル名が作品に描かれています。
(「DOOR TO THE RIVER 23」とグループ展の由来については、後述いたします。)



正面壁面全体を使った大作「CARD WORKS・240DAYS」の部分です。
河上喜彦(KAWAKAMI Yoshihiko)さんの作で、紙にインクを使用しています。
6色前後の万年筆用インクで線を引き、それを水でぼかしたり、漂白剤で色を抜いたりする、独創的な方法で制作されています。
タイトル通り、1日1枚240日分のCARD WORKSです。



右壁面の菱刈俊作(HISHIKARI Shunsaku)さんの「後日の光景」の部分です。
(画像は額装のガラスの反射を避ける為に斜めから撮影したものです。)
これもコラージュの作品ですが、同じコラージュでも各々に個性がありますね。
古い雑誌などの写真を切り抜いてコラージュし、その上から針でスクラッチ(引っ掻く)しています。
よく見ないとコラージュが分かりませんが、それほどに繊細な融合が為されています。



地場賢太郎(CHIBA Kentarou)さんの『ライフスクロール「仮名の誕生」』の部分です。
ペンのドローイングですが、驚くべきことに、黒い紙に白いペンで描かれているのではありません。
白地の紙に黒いミリペンで描かれているのです!
大変な労作ですが、タイトルのように、所々に仮名文字が浮き上がっています。



河上明彦(KAWAKAMI Akihiko)さんの連作4点「ことのゆくえ -残匂-」の1点です。
パネルにアクリルで描かれています。
抽象画ですが、縦のベージュの矩形がポイントで、並べられた4点でリズムが作られています。
絵の具は自家製で、何色も重ねられた末の深い紺が、印象的です。



和田彰(WADA Akira)さんの「てるてる」11点のうちの1点です。
モチーフはてるてる坊主で、紙を使用しています。
あるとき和田さんは老女の乳房を見て、何かを感じたそうです。
老女の乳房を反対にすると、てるてる坊主の姿に似ています。
乳房が象徴するものは、人の誕生と生育。
てるてる坊主が象徴するのは、陽の光。
それはどこかで、生命の神秘、生の実感として繋がっています。



川へのドア展ー「DOOR TO THE RIVER 23」ーは、横浜国立大学教育学部美術科の卒業生のグループ展です。
作家の年齢は50〜58才で、先輩後輩の関係になります。
川へのドア展ー「DOOR TO THE RIVER 23」の由来は、オランダ出身で主にアメリカで活動したウィレム・デ・クーニングの作品名にからきています。
その作品「DOOR TO THE RIVER」に共鳴した美術科の学生が、23回目のグループ展を開いたのが、今回の展覧会です。

展覧会は年一回ではなく、隔年の時もあったそうですから、23回といえば、およそ四半世紀に渡るグループ展になります。
それだけでも驚きですが、各作家の力の入り方も半端ではありません。
回を重ねることによるダレがまったく見られません。
とても興味深いグループ展です。

各作家が独自の手法、方法で作品を制作しています。
その手法、方法に一捻りがあって、単なる平面や立体になっていません。
各コラージュも手が込んでいて、その方法や作品として成り立ちに大きな違いがあります。
比較的オーソドックスな絵画もあれば、日々の丹念な積み重ねが作品となったものもあります。
ここにあるのは、単なる同窓生のグループ展ではありません。
デ・クーニングの作品の核心に共振した同志のグループ展です。
そういった迫力が各作品にみなぎっています。

ご高覧よろしくお願い致します。

 

会期

2010年11月1日(月)-11月6日(土)

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内