藍 画 廊



小谷野夏木展
図と相
KOYANO Natsuki


小谷野夏木展の展示風景です。



各壁面ごとの展示をご覧ください。



画廊入り口からみて、左側の壁面です。
左から、作品タイトル「魔法陣 no.1」で、作品サイズ75(H)×85(W)cm、「魔法陣 no.2」で75×85、「魔法陣 no.3」で75×85です。



正面の壁面です。
左から「夜の息」で各35×29が12点、「魔法陣/黄土」で55×55です。



右の壁面です。
左から「魔法陣/ポーズする女」で91×66、「魔法陣 no.4」で100×157です。



入り口横右の壁面です。
左から「見晴らしの観測法 no.4」で78.2×35.7、「見晴らしの観測法 no.3」で78.2×35.7、「見晴らしの観測法 no.2」で78.2×35.7、「見晴らしの観測法 no.1」で78.2×35.7です。

以上が展示室の展示で、その他小展示室に2点の展示があります。
左壁面、正面壁面、右壁面の作品はパネル・綿布・油彩を使用、入口横壁面の作品は紙・水彩・色鉛筆・オイルパステルを使用しています。



左壁面の「魔法陣 no.1」です。
魔方陣とは、架空の魔術で床に描く紋様や文字で構成された図あるいは、それによって区切られる空間のことです。



鳥と植物を描いた、左壁面の「魔法陣 no.3」です。
図鑑や標本のような描画法ですが、どことなく、そういった科学的認識を外れた空間になっています。
本展について小谷野さんが記したテキストがあります。
掲載してみましょう。

図像というのはいつでも失敗を約束された魔法のようなものですが、その踏み外しの技術について学びます。
私は不馴れな手つきで図像を配置するでしょう。
そして、標本を見るかのように観察する。
おそらくそこには何も起こりませんが、たまに掛け違いになった魔法の窪みの中に、期待の、言い換えれば感情的な何かの断片が見え隠れするわけです。
そういうものを、改めて注視したいのです。



正面壁面の「夜の息」です。
小谷野さんの絵画からは、どれも夜の空気が漂っています。


右壁面の「魔法陣 no.4」です。
無関係に並べられた、動物と人間と花と昆虫と人物の像。
しかし、わたしはこの画面にひとつの世界を見てしまいます。
それはわたしたちの合理的な関係の反対側にある、もうひとつの世界です。



入口横壁面の「見晴らしの観測法 no.3」です。
この見晴らしの観測法シリーズは、他の作品とは違う描法(ドローイング)になっています。
雰囲気も違いますが、描かれた世界は同じです。
精緻な風景の描写には、陰画の感覚が隠れています。



絵画というものは、絵です。
当たり前のことですね。
人は絵を描く。
そして、その絵をまた人が見る。

絵の中の図は、事物の形態を模したものです。
小谷野さんの図は、かなり正確に、あるときは図鑑のように模しています。
しかしその正確さはちょっと奇妙で、正確なゆえに何かがズレています。
そのズレた様子は、真昼の日常の裏側を垣間見せます。
それを闇という言葉で表現するのは、少し違うような気がします。
闇ではなくて、もうひとつの世界といった方がより近いと思います。

その世界の合理は、この世界の合理とは、少し違います。
図の相(見え方)は、私にそう語っています。
しかしどちらが正しい合理なのかは、分かりません。
わたしといえば、小谷野さんの絵画の方に親近感を覚えますが。

人は絵を描く。
それは正確に見えるものを描いているようで、実は、見えないものを描いているのかもしれません。
人は絵を見ます。
それは描かれたものを見ているようでいて、その実、見えないものを見ているのかもしれません。

小谷野さんの絵は、少し怖い絵です。
他方で、小谷野さんの絵には親しみがあります。
その両方が入り混じった、図と相。
スッとその世界に入って、描かれた事物たちの、奇妙でいて必然な関係を楽しみたいと思います。

ご高覧よろしくお願いいたします。


会期

2010年3月15日(月)-3月20日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内