藍 画 廊



古屋一弘展
FURUYA Kazuhiro


古屋一弘展の展示風景です。



各壁面ごとの展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、左側と正面の壁面です。
手前から、作品タイトル「Chopsticks ( ハシ )」で、作品サイズ170 cm、「Rabbit ( ウサギ )」で93 cm、「Chopsticks ( ハシ )」で170 cmです。



右側壁面です。
左から「Button ( ボタン )」で70 cm、「Button ( ボタン )」で70 cm、「Finless Porpoise ( スナメリ )」で140 cmです。



入口横の壁面です。
ドローイング三点で、各31.8(H)×23(W) cmで、紙に鉛筆を使用しています。
立体作品は「Rabbit ( ウサギ )」がlimestone、それ以外の作品はmarbleを使用しています。



左壁面前の 「Chopsticks ( ハシ )」です。
確かに箸(ハシ)ですが、巨大な箸です。
人間の身長(170cm )くらいある箸です。
造形が確実で、技術の確かさを感じさせる彫刻です。



同じく左壁面前の「Rabbit ( ウサギ )」です。
このウサギも実際より相当に大きいです。
中型犬ぐらいの大きさがあります。
この作品はmarble(大理石)ではなくlimestone(石灰石)を使っているので、質感が他の作品と異なります。
美しい灰色で、毛並みも細かく再現されています。
ポーズもカワイイですね。



正面壁面の「Chopsticks ( ハシ )」です。
こちらは立て掛けられた箸です。
大きさには驚きますが、marble(大理石)の模様が何ともいえない美しいです。



右壁面前の二つの「Button ( ボタン )」です。
これも巨大で、巨人の服のボタンに違いありません。
上の画像ですと一見木彫に見えますが、これもmarble(大理石)です。



同じく右壁面前の「Finless Porpoise ( スナメリ )」です。
スナメリはネズミイルカ科の哺乳類で、全長約1.8メートルのハクジラです。
砂を上を滑るように泳ぐので、砂滑(スナメリ)と呼ばれているようです。
この作品だけは、スケールと色合いがほぼ実物と同じように制作されています。



事物のスケールが大きく狂った世界。
まず思い出すのは『不思議の国のアリス』です。
白ウサギを追いかけて穴の中に飛び込んだアリスは、巨人のように大きくなったり、半分の身長に縮んでしまったり、変わったワンダーランドの生き物とであうことになります。
しかし古屋さんにお話を伺ってみると、制作動機はむしろ日常生活にあるようです。
いろいろなメディアによって日常に同居しているイメージと日用品を、古屋さんが独自に再構成したのが今回の展示です。

わたしたちは特に意識もせずに、日用の品々を用途によって使っています。
例えば箸。
しかしこの箸の形をよく見ていると、その形状の完成された美しさに気が付きます。
それは長い年月を経て、事物が獲得した美しさです。
ボタンにも同じことがいえます。
(その美しさを根底で認識させているのは、古屋さんの確かな視点であり、技術です。)

それと何の不思議もなく同居している、イメージとしてのウサギやスナメリ。
新聞や雑誌やテレビで画像として、あるいは置物やヌイグルミとして、日常に在る動物たち。
それらを特に脈略もなく、スケールを大きく違えて、日常を反転させたようなワンダーランドとして展示されています。
がしかし、それは逆に日常の本質を浮かび上がらせています。
日常をよく観察していれば、日常とはそのような(ある意味で)カオスな状態で、美は思わぬところに隠れているのです。

制作時、古屋さんは視覚と触覚(手で石を触った感じ)で造形を確かめながら作業を進めるそうです。
特に触覚。
微妙な感触に神経を集中させます。
作品は(汚さないようご注意下されば)自由に触れることができます。
箸やボタンやスナメリを手で触っていると、その滑らかな表面とカーブに、手が幸せを感じます。
古屋さんの作品意図が、眼と同時に身体に伝わってきます。
手の幸せ、是非お試し下さい。

ご高覧よろしくお願いいたします。




会期

2009年10月12日(月)-10月17日(土)

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内