藍 画 廊



狩野真史展
創形美術学校 高澤賞受賞展
KANO Masafumi


狩野真史展の展示風景です。



各壁面ごとの展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から、作品タイトル「Surface」で、作品サイズ855(H)× 605(W)mm、「Mirror - 2」で605 × 605、「Mirror」で605 × 605、「Puddle」で450 × 605です。



正面の壁面です。
左から、「Nostalghia」で1210 × 915、「splash」で915 × 605です。



右側の壁面です。
左から、「River and a bridge - 4」で1110 × 805、「River and a bridge」で1210 × 805、「River and a bridge - 3」で1110 × 805です。



入口横の壁面です。
左から、「Surface - 2」で430 × 303、「Surface - 6」で213 × 150、「Mirror - 3」で303 × 303です。

以上の12点が展示室の展示で、その他小展示室に3点、事務室壁面に1点の展示があります。
作品はすべて木版画です。
<高澤賞とは創形美術学校研究科修了作品を審査し、成績優秀者に与えられる個展賞です。>



左壁面の 「Surface」です。
「Surface」とは水面のことです。
作品のモチーフですが、作家の手によって自由に再構成されています。



同じく左壁面の「Puddle」です。
「Puddle」とはカヌーなどの櫂や(汽船の)水かき、翼などの意ですが、これも作家の想像力で自由に変えられています。



正面壁面の大作「Nostalghia」です。
木版画としては異例の大きさで1210 × 915mmあります。
よく見ると、画面は2枚の紙で繋ぎ合わされています。
手漉の和紙の大きさの限界で、そのような仕様になっていますが、一枚の絵として問題なく完成されています。

以上の三点でお気付きかと思いますが、狩野さんの作品は色彩が豊かです。
木版画としては彩度の高い色合いですが、とても画面で映えています。



右壁面の「River and a bridge - 4」です。
この「River and a bridge」シリーズが前述した高澤賞の受賞作です。
色合いと構成が他の作品と若干異なっていますが、他が「River and a bridge」シリーズ以後の作品です。



同じく右壁面の「River and a bridge」です。
このシリーズの色彩は渋めですが、見事で、構成にも力があります。
受賞作に相応しいシリーズで、川と橋が形を換えて、自由自在な想像力で組み合わされています。



入口横壁面の「Surface - 2」です。
他の作品と同様、美しい色の重なりです。



木版画は、日本では版画としては最も親しみのある版画です。
その昔は年賀状に木版画がよく使われました。
今ではコンピューターとインクジェットが主流ですが、メディアとしての出自は同じです。
木版もまずは絵というより、情報を伝えるメディアとして普及したのですから。

しかし今では木版画は版画という美術のジャンルで定着しています。
版木の木目を活かした味のあるマチエールやボカシ。
浮世絵の伝統もあって、やはり日本人には最も近しい版画でしょう。

版画というのは、制約のある絵画です。
色数が限られますし、大きさにも限界があります。
しかしそれらの制約を逆手にとって、版画家は鮮やかな色使いや、内面の世界を実現しています。

狩野さんの作品でまず感じるのは、色彩の美しさです。
それも、版画、木版画でしか表現できない色合いの美しさです。
具象と抽象を繋ぐような、形の形態にも面白さがあります。

しかし何といっても印象的なのは、作品のスケールです。
狩野さんの作品は、スケールが大きい。
一般的に、版画は小宇宙的で繊細な作風の作品が多い傾向にあります。
狩野さんの作品も、その良さを継承しながら、スケールの大きな世界を表現しています。
それは作品サイズだけの問題ではなくて、作品の質が大きく関わっています。
版画の特徴を活かしながら、良い意味で、版画の世界を超える表現が為されています。
そのスケールの大きな表現は、ちょっと得難いと思いました。

ご高覧よろしくお願いいたします。



会期

2009年10月5日(月)-10月10日(土)

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内