藍 画 廊



本橋大介展
MOTOHASHI Daisuke



本橋大介展の展示風景です。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から、作品タイトル『 運 ぶ 人 』で、作品サイズ62(H)×75(W)cm、『 飛 ぶ 坊 主 』で95×110、『 銀 河 系 坊 主 』で97×163です。



正面と右側の壁面です。
左から、『 髑 髏 と 山 水 』で96×169、『 妄 想 坊 主 』で100×18、『 ロ ケ ッ ト 坊 主 』で78×92、『 煩 悩 の 丸 』で88×97です。



右側の続きと入口横の壁面です。
左から、『 哺 乳 類 の 花 』で73×96、『 賛 成 で き な い 顔 』で27×48、『 光 線 銃 と 三 匹 』で95×133です。

本橋大介展は以上の十点の展示です。
作品は和紙に水性木版・ドローイングです。



左壁面の 『 運 ぶ 人 』と部分の拡大です。
本橋さんは大学、大学院で木版を学んだ後、日本に木版を伝えた中国に二年間留学しています。
『 運 ぶ 人 』は木版画ですが、通常とは違い、彫った版木を何回も使って大きな作品に仕上げています。
パターン(繰り返し)を巧みに取り入れた技法で、右の部分を見れば同じ版が使われているのが分ります。
画面は、中国の昔の画像の引用、改変と、80年代に想像した未来の宇宙船(レトロフューチャー)が組み合わされています。
その落差と、木版画の味が楽しい作品。



同じく左壁面の額装された 『 銀 河 系 坊 主 』です。
タイトルも面白いが、中身も面白い作品です。
レトロな宇宙船やロケットに、坊さんが乗り込んでいる(?)図。
右は部分で、坊さんの集合ですが、中国で徹底的に習得した木版画の彫りの技術が、並でないことが分ります。



展示されている作品は、マットが施されているか額装されています。
見やすさを優先して画面だけを載せていますが、上は額装された正面壁面の『 髑 髏 と 山 水 』の展示です。
パターン(繰り返し)ですが、近づいて髑髏(どくろ)を見れば、山水が立ち現れています。
他の作品にも見られる、画面中央から四方に延びるラフなドローイングは、版画のカチッとした感触を和らげています。



右壁面の 『 妄 想 坊 主 』です。
右は画面下の部分です。
画面の上と下に坊さんが座っていて、各々の頭から妄想が湧き上がっています。
上の方の逆さになった坊さんがユーモラスですが、妄想はとてもカラフルで美しい。
何とも言えない間を持った、秀作です。



同じく右壁面の 『 煩 悩 の 丸 』です。
画面に無数の円がありますが、一つの版木はボンヤリ見えるグリッドの一つの方形です。
その版木をずらしながら摺っていって、一枚の大きな作品に仕上げます。
右は部分ですが、おおよその版木の大きさで、これを彫るのに二ヶ月を要するそうです。



入口横壁面の 『 光 線 銃 と 三 匹 』です。
一昔前に想像した未来の光線銃と、地獄の鬼のような三匹が重ねられています。
ガジェット(オモチャ)のような光線銃とリアルな描写の鬼たち。
一つだけ彩色された光線銃が、画面に軽さと異化を与えています。


本橋さんの作品は版画です。
その巨大な木版画を見た時、驚きました。
木版画の画面の大きさの常識を逸していたからです。
説明を聞けば、版自体は小さなもので、それをずらしながら大きな紙に摺っていくという。
何となく納得しましたが、それにしてもの大きな木版画です。

本橋さんの作品の特徴は、反復です。
幾つかの図柄が反復して、パータンになっています。
しかし尋常でないのは、図柄の組合わせです。
新旧というより、捻った時空の組合わせで、見る者を異次元に誘います。
それも、観念だけで実在することのなかった、彼(あ)の日の宇宙船やロケットに乗せられて。

作品について本橋さんに訊ねていたら、作品は音楽の影響があるとのことでした。
テクノ、ミニマルミュージックなどの、反復を基調とする音楽です。
それを伺って、作品への理解が一気に進みました。
軽妙なタイトルの作品の画面は、良質なテクノミュージックのポップさと共通項があります。
『 煩 悩 の 丸 』の透き通るような美しさは、極上のミニマルミュージックです。

驚くことはまだあって、その精緻な木版技術と、それに反するような通俗への指向です。
中国で徹底的に仕込まれた技術は、坊さんや鬼や光線銃など、随所に発揮されています。
一方で通俗やバカバカしさを大胆に取り入れていて、そのギャップに視覚が戸惑います。
遊びもここまで腰が入っていると、降参です!

と、楽しんだ後で気が付くのは、図柄の持っている意味です。
古くから今に伝わる人物や動植物、風景の図柄。
あるいは単純な図形が繰り返される図柄。
それは一体、何でしょう。

ご高覧よろしくお願いいたします。




会期

2009年5月11日(月)-5月16日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内