松田麗香展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。 左から、作品タイトル「そこにある それもまた 8」で、サイズはM50、 「そこにある それもまた 5」で、S6です。 |
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入口横右の壁面です。 左から、「そこにある それもまた 4」で、M4、 「そこにある それもまた 1」で、P8です。 |
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左側の壁面です。 左から、「そこにある それもまた 3」で、M60、 「そこにある それもまた 2」で、M10です。 |
画廊内の展示は以上の六点で、その他道路側ウィンドウに一点、芳名帳スペースに一点の展示があります。
作品は雲肌麻紙、岩絵の具を使用していますが、「そこにある それもまた 3」と「そこにある それもまた 8」は箔も使っています。
左壁面の「そこにある それもまた 3」です。
同じく左壁面の「そこにある それもまた 2」です。
美しい模様で、エスニックなパターンに見えます。
インドネシアのバリあたりの織物のようです。
タイトルが上の作品とシリーズになっていますが、関連性はどこにあるのでしょうか。
「そこにある それもまた 2」をクローズアップで見てみましょう。
輪が繋がっていますね。
リングが無数に描かれていて、それが縦縞のパターンのように見えたのです。
実は、最初の画像「そこにある それもまた 3」のバックも無数のリングで成立しています。
そして岩に見えたものは、拡大したリングの半分だったのです。
シリーズ名「そこにある それもまた」とは、無数の連鎖、リングを表しています。
正面壁面の「そこにある それもまた 8」です。
このリングは大きいので、すぐに分かりますね。
中央に箔を使って描かれたモノの正体は不明ですが、連鎖の次元変換でしょうか?
全体に静的な画面が多い中で、動きを感じさせる作品です。
次回展覧会に繋がる作品ではないでしょうか。
これも、美しい模様です。
右壁面の「そこにある それもまた 5」です。
正方形の画面ですが、とても優雅で美しい。
やはりリングで構成された作品です。
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入口横右壁面の二点です。
左の作品の8の字に見えるのは、リングの拡大です。
右の作品もよく見ると、大小のリングが見分けられます。
道路側ウィンドウの「そこにある それもまた 6」です。 黄色のリングが目立ちますが、背後でリングが無数に折り重なっています。 海の底から立ち昇る泡を連想させますね。 |
「そこにある それもまた」。
展示作品のシリーズ名です。
存在するすべてのものは、繋がっている。
そして、その繋がり(リング)が世界、宇宙を構成している。
そういった意味が込められたタイトルだと思います。
作品の模様の美しさは、当初から意図されたものではありません。
色相だけを決めて、ひたすら何重にもリングを描き続けた結果が、絵画(模様)として結実したそうです。
作品紹介で画面をエスニックな模様に喩えましたが、内実は同じかもしれません。
織物は工芸ですが、工芸の多くには自然観、世界観が内包されています。
(用途を排除し、その自然観、世界観だけを抽出したのが、近代の美術です。)
工芸ではパターン、つまり繰り返す模様が多く見られます。
その意味するところには、松田さんの絵画と同じ連鎖があるような気がします。
「そこにある それもまた」。
この言葉は、工芸の自然観、世界観と重なっています。
人間中心主義の近代美術、デザインとは異なった考えが、工芸と松田さんの絵画にはあると思います。
ご高覧よろしくお願いいたします。