村井一貴展の展示風景です。
原子のモデル、あるいは天体の軌道のように見えますね。
作品は鉄と木とカシュー漆塗料で作られています。
フレームのような部分が鉄で、中心の物体は鉄と木の二種類の作品があります。
カシュー漆塗料は漆の質感に似た塗料で、カシューナッツの実の殻から採れる樹脂が原料です。
それでは各壁面ごとに展示をご紹介します。
左が、画廊入口から見て正面と右側壁面方向です。
手前が作品タイトル[物体b-1]でサイズは80(H)×82(W)×79(D)cmです。
壁面左が[物体b-3]で、33×33×30cm、
壁面右は[物体b-4]で、30×28×21cmです。
右は入口右横の壁面で、[物体b-5]で、22×20×17cmです。
左側の壁面です。 [物体b-2]で、65×60×58cmです。 この作品と床置きの[物体b-1]が中心の物体に木を使用した作品で、その他は鉄を使っています。 |
以上が画廊内の作品五点で、その他ドローイング作品が道路側ウィンドウに一点、芳名帳スペースに一点展示されています。
床置きの[物体b-1]です。
この画像では分かり難いのですが、中心の物体は濃い緑に塗られています。
物体は幾つかのブロックを接合したものです。
ブロックの辺の角から鉄の線が空中に延び、その線は他のブロックの辺の角に収まっています。
線の軌跡は円弧を描いていますが、中途で円弧と円弧を結ぶ線も発生しています。
有機的な結合で、物体は形成されています。
左壁面の[物体b-2]です。
中心の物体がプロペラ(ファン)に見えますが、特にモチーフはないそうです。
物体は最初にこの形が想定されていたわけではなく、白紙の状態から造形されたものです。
この作品は物体の先端から鉄の線が生じ、他の先端に繋がっています。
次は小さな作品二点をご覧下さい。
左は[物体b-3]で、右は[物体b-4]です。
作品の構造はすべて同じですが、小さな作品の方がシンプルなので分かりやすいかと思います。
右は真横からの撮影ですが、見る角度によって変化も楽しめる作品です。
冒頭に原子のモデル、天体の軌跡と書きましたが、作品は構造のモデル(模型)ではありません。
物体の構造(システム)そのものです。
つまり、宇宙や生命の構造をモデルにしたものではなくて、一つの世界をそのまま存在させたものです。
白紙の状態から、作家は素材との対話で形を作り始めます。
そこに何かが生まれるまで、辛抱強く対話を重ねます。
恐らく、作家の感性の中核にあるのは直観です。
それを頼りに、形が生まれるまで制作は続けられます。
朧げに見えた形を、作家は形態(システム)にまで引き上げます。
これも根気のいる仕事です。
物体の成立ちに共通があるとすれば、それは物体のシステムです。
村井さんの物体(世界)は有機的な結合を持つシステムです。
そのシステムは、美しい。
なぜでしょうか。
その問いは、必然的に美術に存在意義と重なります。
ご高覧よろしくお願いいたします。