藍 画 廊



ヨハネス・シュペアー展
GLOBAL PLAYERS in galleries
Johannes Spehr



「グローバル・プレイヤーズ ― 日本とドイツの現代アーティスト」の日本展は、東京・横浜・大阪・札幌を舞台に、「日本におけるドイツ2005/2006年」の文化プログラムの一環として開催される現代アート展です。
横浜市内にアートスペースとして蘇った旧第一銀行(BankART1929)と旧日本郵船倉庫(BankART Studio NYK)の2つの会場では、ドイツと日本の作家によるグループ展が開催され、それに先立ち東京の銀座の11のギャラリーならびに札幌と大阪の各ギャラリーではドイツのアーティストの個展が同時開催されます。


藍画廊で個展を開くドイツの現代美術作家はヨハネス・シュペアー/Johannes Spehr(1965年フランクフルト生れ)さんです。

作品の前に立つシュペアーさん。
ドイツ、ヨーロッパの画廊、美術館で数多くの作品発表、展示があります。
Biography


ヨハネス・シュペアー展の展示風景です。


画廊入口から見て正面と左側の壁面方向で、展示の全景です。

左壁面に展示された平面作品二点、タイトルは共に無題で、左が78.7×108.7cm、右は46.7×76.1cmです。
紙にアクリル絵具を使用しています。

正面壁面の作品、タイトル「 CAMP 16 / WOHLSTANDS KERN (富の核)」で、257×160cm。
布にアクリル絵具を使用しています。

空中に洗濯バサミで吊るされた作品は「 Nachbarn (隣人)」で、紙に描いたドローイングのコピーです。

ここで「グローバル・プレイヤーズ」の展覧会趣旨をプレスリリースから引用させていただきます。

「グローバル・プレイヤーズ」は、我々が文化的な背景や地域を問わず、全ての生活分野に渡って影響を受けていると考えられている、地球規模で見てとれる現象に焦点を当てています。
それは 商品化、情報、コミュニケーション、ブランド消費、社会構造の変換といった現代のキーワードで置き換えられます。
「グローバル・プレイヤーズ」というタイトルは、現代社会において現実に構築されつづけている権力、市場経済、資本主義的構造に対抗するモデルとして、アイロニーも含めて提示されているのです。
また、私たちにとって当然の権利である独自のアイデンティティーや多重構造的なライフスタイル、自由な想像世界、記憶やイマジネーションの力も、このタイトルと展覧会に込められた主張です。

それでは、各作品をご紹介いたします。
左壁面の左側の平面です。



ドイツとおぼしき国の、ある部屋の様子が描かれています。
壁を破って多くの人が侵入してきていますが、部屋を出ていく民族もいます。
テーブルの上のコンピュータが膨大な情報を吐き出している様子も窺われます。

これはドイツのファミリーの内外に起こっている事態を戯画(カリカチュア)化したものですね。
絵本のような描き方で、事物と情報の移動が起こす混乱が表現されています。




画廊に大量に吊るされたポートレイト(紙にコピー)です。
人々はこちらに向かって指差しています。
アメリカの軍人徴用ポスターの「I Want You」を思い出させます。

シュペアーさんの話では、描かれているのは彼の実際の隣人です。
彼は(今は誰でもそうだが)隣人との関係が疎遠で、少し怖い感じがしていたそうです。
それで、隣人を自らの内側に招く為にこのドローイングを描いたそうです。
日本の劇画のような筆致が面白い作品です。



正面壁面の「 CAMP 16 / WOHLSTANDS KERN (富の核)」です。
題名の通りキャンプの様子が布に描かれています。
部分をクローズアップしてみましょう。


柵で囲まれたキャンプの日常です。
大きな夫婦の肖像画に自分(?)の小さな肖像を貼ろうと争っている人々。
右上ではオリンピックの表彰のようなセレモニーが行われています。
高級車(メルセデス)の前で尻を出して鞭打ち刑を受けている数人。
キャンプ場の清掃や雑務をする人々も点々と描かれています。


描画は一枚に見える大きな布に為されていますが、布は幾つかの衣服が合体したものです。
シャツやブラウスやジャケットが境目なく合体しています。
これはコミュニティ(共同体)を暗示しているものと思われます。
キャンプは社会のカリカチュアで、そこで描かれている日常は「富の核」(富はどのようにして生まれるのか)そのものです。


シュペアーさんの絵画は、古い要素と新しい要素が混在しています。
デューラー(ドイツの版画家)のようでもあり、視点やパースは日本の大和絵を彷彿させます。
コミック(マンガ)やイラストレーションにも近い。
広い意味での民衆画、ローアートと親近性があります。
それでいて現代的な表現なのは、彼の眼が社会を正確に見ているからです。
イメージにとらわれず、家族やコミュニティ、国家の本当の姿を見ているからです。

彼は日本に来て原宿に行ったそうです。
わたしは東京の面白そうな街を幾つか彼に教えました。
その一つは、六本木ヒルズです。
東京で最もバッドな街として、ヒルズを推薦しました。
彼がどんな感想を持ってドイツに帰るか、楽しみです。

ご高覧よろしくお願いいたします。

グローバルプレーヤーのご案内(PDF)


会期

2005年9月12日(月)-9月24日(土)

日曜休廊

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内