藍 画 廊



坂内美和子展
-LIFE(生命)series 5-
SAKAUCHI Miwako


坂内美和子展の展示風景です。


画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。

左は、タイトル「より確かなもの」で、サイズは116.7×91.0cm。
右は、「見果てぬ夢」で、33.3×24.2cm。
二作品とも、キャンバスに油彩です。
入口横右の壁面です。

「どこまでも深く強く」で、145.5×112.0cm。
キャンバスに油彩です。
左側の壁面です。

左は、「宙ーsora−」で、130.3×162.0cm。
右は、「出会い」で、45.5×38.0cm。
二作品とも、キャンバスに油彩、砂です。


坂内さんのLIFE(生命)シリーズは、今回で五回目になります。
画廊内に坂内さん自身が記した「今回の個展によせてー個展コンセプト」が貼付されています。
かなりの長文ですが、部分を引用しながら作品をご紹介したいと思います。
(引用はグレーの文字で、改行は原文とは異ります。)



左側壁面の
「宙-sora-」です。

私の創作で転機になったのは『宙-Sora-』という作品。
でも別にこれは空の青さでもなく、宇宙の黒でもない。
コーラルレッドはこれまでポイント的に使っていたが、地として使うのは初めてだ。
ここには、奇妙な生命のような形がくっきりと浮かび上がっている。
ストロークで抽象的な形を様々に描いてきたが、ここまで明確に輪郭を持った形は初めてである。
今回の個展の方向性はこの時に決まったようだ。
沈み、何かを引き込むような黒ではなく、生命の力をオーラのように与える。
明度の高い色彩、そしてキャンバスの中に息づく、命あるものたち、私は今回の絵で観る人に、今流行の「壊れた心」を解き放ってあげたいと思う。
それが今の私の心境だ。

引用が前後しますが、坂内さんは個展のコンセプトを次のように書いています。

私は生命シリーズを6年ほど続けてテーマにしている。
ますます世の中が暗い方向へ突き進んでいるためか、作品自体も徐々に黒をポイントに描くようになっていった。
それは、黒がすべての色を集めたものということで生命を包括的に現せるということがあった。
さらには、黒が示唆するさまざまに錯綜するものの根底にあるもの、例えば今の世の中に吹き出している暗さ、どうしようもなさ、そういったものを吐き出すように描いた。
どうすれば歯止めが利くのか?
どのようにすれば人間らしい心豊かな生活に戻れるのか?
絵を描きながらそんなことを考えていた。
今回からは、そんな自分自身の気持ちをはつらつとさせたい、すがすがしいものにしたい、心機一転も兼ねて、ざわつき感はあるものの、明るく、パワーのある色もとり入れてみたい。
そんな心境になった。
こんな時代だからこそ、人々は今心豊かで、未来のある、生命に満ちあふれた明るさを求めていると思っている。
これからの私の絵には、コーラルレッド、パーマネントグリーンといった明度の高い色は必要不可欠。
それらはすべて「陰」から「陽」へ、つまり「陽」の部分を強くし、希望の見えなかった世界からこれから何かが始まるという上昇感への移行である。



正面壁面の「より確かなもの」です。

それから私の作品はいつも連作で描いてはいるものの、それぞれが違った表情を見せている。
その中でもう一つ注目してほしいのが『より確かなもの』。
この作品だけは、初めから他の作品と描き方が違っていた。
下地と仕上げの表現方法を極端に変えている。
つまり、内にあるものと外にあるものの見え方をはっきりさせたかったのである。
ここでは、人間は欲張りであり、さまざまな考えを持つ複雑な生き物だというものを、改めて自覚したかったからなのかもしれない。
黒と白の線は、今回「陽」の役割を果たしてくれている。


右壁面の小品、「見果てぬ夢」です。


坂内さんの作品に表れた、荒々しいタッチと明解な色彩は、生命の力強さを表現しています。
「気」の放出とでも形容したくなる、すべての始まりを予感させる画面です。
この放出されるエネルギーは、当然既成秩序を破壊していきます。
だから荒々しいのですが、人とは本来そういった力を持った生命かもしれません。

現在は、荒々しさが<陰>の世界ばかりに作用しています。
いかにマスなイメージで明るさを取り繕っても、世界は陰惨であり続けています。
坂内さんの生命シリーズの転換は、その力を<陽>の世界に変換することのようです。
根源的な生命の力を信じて。



2003年藍画廊個展

作家Webサイト


会期

2005年7月11日(月)-7月16日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内