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藍 画 廊


浜田涼展



左は画廊入口、芳名帳の上に展示された小品群です。
どこかノスタルジックに見えます。
遠い過去の、異国のポートレイトに見えます。
そう、例えば租界地があった頃の上海の写真館に残っていた肖像写真、と言ったら信じてしまいそうですね。
実際はつい最近撮影した浜田さんの近親者のポートレイトです。


会場風景です。
大作(133×90cm)から小品(17.5×14.5cm)まで、全て異なったサイズの作品13点で構成されています。
会場に入ると一瞬眼がおかしくなります。
ポートレイトの焦点が大幅にボケているので、眼が焦点を合わせることが出来ず狼狽えてしまうのです。
「白内障になったみたい!」と形容した鑑賞者がいましたが、言い得て妙です。
おぼろげな記憶のような輪郭と、鮮やかだがどこか優しい色が点在している画廊風景は妙に美しい。

浜田さんは風景をモチーフにして作品を作ってきました。
ピンボケの写真をカラーコピーして、その上からペインティングする手法で制作してきました。
今回は、半透明のコピー用紙にコピーして、その上に2枚の半透明コピー用紙を重ねて展示しています。
方法論は変わっていない、といってよいでしょう。
変わったのは、撮影対象。
風景から人物に変わりました。


大切な人の写真を持っていますか?
その写真の表情以外に、その人の顔を思い出せますか?

これは、案内状に記された浜田さんのメッセージです。
わたしは、だいぶ前にある人から興味深い話を聞いたことがあります。
その人は、ある女性を好きになって、寝ても覚めてもその人のことを思っていたそうです。
しかし不思議なことに、その女性と会っていない時、どうしてもその女性の顔を思い出せなかったそうです。
死ぬほど恋い焦がれていたのにもかかわらず、思い出せなかったそうです。
人間の記憶の不思議さです。

人間の記憶は、大きな思い違いがあったかと思えば、些細なことをはっきり憶えていたりします。
それは風景に対する記憶でも、人物に対する記憶でも同じです。
憶えようとしなくても憶えているもの、憶えようとしたにもかかわらず忘れてしまったもの。
人間の記憶のメカニズムとは本当に不思議なものです。

そして、記憶にはある種の美しさがあるようです。
浜田さんの作品を観ているとそう思います。
わたしは、今回の浜田さんの作品の美しさにちょっと打ちのめされました。
その意味をじっくり考えてみたい、と思っています。



本展は画廊外の通路側ウインドウにも作品が展示されています。
又、アクリルで装丁された小品も芳名帳横に置かれています。
これらの作品も必見です。

御高覧よろしくお願いいたします。


会期

2001年4月16日(月)-4月21日(土)

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)



会場案内



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