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藍 画 廊


越田滋展
"Lost View"


越田滋展の展示風景です。


画廊入口から見て、正面の壁面です。
左は、タイトル「Lost View 5」。
右は、タイトル「Lost View 6」。

出品作品は全四点で、すべてゼラチンシルバープリントです。
画廊内に展示された三点のサイズは同じで、1100(W)×1400(H)mm。
画面サイズは、850(W)×850(H)mmです。

左の壁面です。
作品タイトルは「Lost View 7」。
(タイトルの数字はWebの規則で英数字にしてありますが、本来の表記はローマ数字になっています。)


今回は点数も少ないので作品を全点ご覧いただきます。



左の壁面の一点です。
階段ですね。
屋外の階段です。
手摺りが真中にあって、階段を左右に分けています。
階段の上り口にあたる場所からの撮影です。
階段の壁にはグラフィティ(落書き)も見えます。



正面の二点です。
こちらも階段で、同じ場所のようです。
今度は下り口からの撮影で、右と左の作品では撮影角度(アングル)が違っています。

この三点の撮影時期は2000年です。
今から三年前、ちょっと前の撮影ですね。
次は道路側ウインドウの作品を見てみましょう。



これは六本木ヒルズの森タワーですね。
下の黒い部分は六本木トンネルで、生憎(わたしの)撮影時が曇天でしたので黒く潰れてしまいました。
実際の作品ではトンネル部分が良く分ります。
この作品は無題で、305(W)×254(H)mm。
画面サイズは、200(W)×200(H)mmです。
作品の撮影時期は2003年、今年です。

撮影時期のズレは何を意味しているのでしょうか。
実は、上の三点は六本木ヒルズの造成前の風景です。
タイトルの「Lost View」、失われた光景(風景)はそういう意味です。
撮影時には、そこが後に六本木ヒルズになるとは知らなかったと思います。
恐らく偶然ではないでしょうか。

さて、作品の意味に分け入ってみたいと思います。
六本木の丘の上から下に造られていた階段。
覆いかぶさるように繁る樹木が、階段をあたかもトンネルのようにしています。
トンネル、越田さんの前回個展のモチーフです。

ここで仮に、作品の主題を「光」として考えてみます。
トンネルは光りを遮る人工物で、中は闇です。
闇は恐怖ですが、光があれば必ず闇はできます。
それが自然の摂理であり、人間の摂理です。

越田さんの主題は、「光」ではなく「闇」の方に重点が置かれているような気がします。
階段の壁に書かれたグラフィティ、それはラスコーの壁画を想像させます。
古代の人々が洞窟(トンネル)という闇の中で描いた絵(グラフィティ)。
彼らはなぜ闇の中で絵を描いたのでしょうか。
そして、闇とは一体何でしょうか。

六本木ヒルズ、そこに闇は存在しません。
あるのは暗がりだけで、ヒルズは街として失格です。
天使が降りてこない街、です。
街には闇が必要なのです。
光があれば、闇があるはずなのです。
失われた光景(風景)、それは六本木ヒルズが失った闇のことではないかとわたしは思っています。
(意匠を変えて残った六本木トンネルはヒルズの一部なのか、それとも域外なのか。あるいは単なる暗がりでしかないのか。)

ご高覧よろしくお願いいたします。

藍画廊2002年個展


会期


2003年10月13日(月)-10月18日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)



会場案内



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